「ある詐話師の死」

ニット帽を被り口元をマフラーで覆い、がこの冬の手前どもの出で立ちでございます。

が、このコスチュームで外歩きをいたしますと、なにかいかがわしさが倍増するようで、不審者扱いを受けることがしばしばでございます。

先頃は、住まいの近くにある外車の中古車販売の展示場を徘徊しておりましたら、ホースで車に水を撒き掃除をしていた管理人と思しき中年の男が近づいてきて、当方に向かってホースの水を向けてきたのでございます。

あと少しのところで、この寒い冬の空の下、ズブ濡れとなるところでした。

何をしやがる、と怒鳴ってやろうかと思いましたが、ここは相手の敷地の中だと思い、スゴスゴと退散したのでございます。

「人は見かけが9割」と申しますが、この見かけの9割で、これまで随分と酷いあしらいを受けて参りましたが、つい先日もそうでした。

近くの不動産屋の軒先のガラスに貼られてある物件の広告を眺めている時でした。

ふと目をやると店内のガラスの向こうにいる若い社員氏と目が合いました。

と、この若僧は何を勘違いしたのか、手前どもの方を見て「あっちに行け」とばかりに手で払ったのでございます。

野良犬でもあるまいしなんという仕草をするのだと、これまた不快に感じましたが、こんなチンピラ相手にひと悶着起こしても詮無いことと、黙ってその場を離れたのでございます。

そしてまた、先週はこんな屈辱的な体験をしたのでございます。

コロナ禍が明けて、久しぶりに中国の友人が日本にやって来ました。

彼は中国の上海の大学の教授で、お仲間と一緒です。電話で会おうという約束となり、宿泊先の外資系ホテルへと向かいました。

その高層ホテルのロビーは40数階にあり、ロビーのラウンジで中国からの友人を待つことにしたのです。

ソファに座ると、すぐさまウエイトレス嬢がやってきました。友人と待ち合わせをしている、と伝えると

 

 

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