「他人の女房を寝取った時のこと」

 

昔から知り合いの男と久しぶりに会いました。この男との付き合いはかれこれ30数年に及びます。
 
男と手前どもは同年代です。違うのは男には明治大学卒という、輝かしい学歴があることです。加えて男は過去に黒澤明監督に認められ、映画「影武者」に出演後、役者の人生を極めたいと芸能界での活動をはじめたのでした。
 
が、なかなか役に恵まれず、鳴かず飛ばずの日々が10年余過ぎていきました。アルバイトで生活をつないでいましたが、「これではどうにもならない」と表舞台での活動を諦め、AV業界に男優として入りました。
 
男が何十本かの作品に出演している時に、手前どもの畏友の作家の本橋信宏の目にとまり、氏が「面白い男がいる」と紹介してきたのです。
 
最初は5分ほどの面接でしたが、その異様な妖気を漂わせた佇まいに魅せられ、AV男優として手前どものダイヤモンド映像で仕事をしていただくことになりました。
 
数本出演してもらい、今度は監督の仕事も任せてみたいと思うようになったのです。
 
作品の中で魅せるその、共演女優を人間とも思っていない、目を覆うほどのセクハラ行為は、これまでの男優にはない本物の「変質者のソレ」でした。
 
「セクハラ大魔王」との冠をつけ、華々しくデビューを飾っていただいたのです。
 
彼の得意技の一つに「タンツボ飲ませ」があります。
 
SEXシーンの中では、必ず自らの「タンツボ」を、出演女優の口を大きく開かせ、そこに落とし込むという技でございます。
 
実に気色悪い、見ていてゾッとする、と評判は散々なものでしたが、一部の好事家には「これぞ夢にまで見ていた凌辱モノ」と人気となったのでございました。
 
お陰で期待のAV女優の何人かは、この「変態男」との共演以後、姿をくらますという事態となったのです。
 
周囲からも「あんな真性変態に監督をさせていたら、せっかくの有望AV女優さまが何人潰れるかしれない。即刻クビにすべきだ」との批判の声が上がりましたが、売れっ子AV女優は次から次に誕生するが、「売れっ子監督は次から次というわけにはいかない」と彼の才能を評価していた手前どもは我慢強く監督として使い続けました。
 
その評判の悪さは「作品の悍ましさ」に…

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