押し入りタタキ(=強盗)の凶行を働く犯人が、指示役に囁かれていた言葉は「大丈夫だよ、どうせ押し入った先の金は持ち主が詐欺や脱税を働いて隠し持っている”悪い金”だから、奪われたからといって警察に届け出るようなことは決してないから安心しなよ」でございました。
疑いつつも、実行犯たちはこの言葉で自分の行動を正当化でき、普通では考えられないような大胆な押し入り強盗を働いたのでした。
まったく口は調法といいますが、よくもそんなセリフを思いつくものだと呆れるばかりでございます。
実行犯の指示役と疑われる人物は、現在フィリピン、マニラの外国人収容施設に「特殊詐欺の指示役」として地元警察に逮捕され、拘束されているとのことでございます。
中では5000ドル程の米ドルを渡せば個室を与えられ、スマホ所有も認められての優雅な暮らしが出来る環境だとのことです。
が、今回の事件の発覚で、自分たちが指示役であることが明らかとなり、それまでは顔を出していた屋外の運動場にも顔を見せず、自室に引きこもったきりの状態というのです。
おそらくは近日中に日本に引き渡され、二度とシャバでの生活が叶わぬ身となることを恐れて、夜も眠れぬ状態ではないでしょうか。
悪銭身につかず、の言葉通りの顛末でございます。
彼ら実行役が身柄を拘束されている入国管理の収容施設には行ったことはありませんが、マニラの警察の留置場やマニラ市郊外の大東亜戦争終戦後、戦犯としてこう留されていた山下奉文大将閣下以下、B級C級戦犯が収容されていた、通称モンテンルパ刑務所(ニュー・ビリビッド刑務所)には取材で何度か行ったことがあります。
フィリピンのああした留置場や刑務所の施設の環境は劣悪で、自分の寝るベッドを提供されるということはありません。
こう留されている室内に、ただ犬や猫のように放り込まれるだけで、後は自分で段ボール等を集めて寝床とするという自助努力で凌いでいくしかないのでした。
食事もほとんど支給されることはなく、収容者の中で金回りのいい人間から恵んでもらって、ようやく3食にありつけるという施設暮らしとなるのです。
マニラ市内の警察の留置場に行った時は、そのスペースの余りの狭さに驚きました。
それぞれの房内は収容された、上着のないパンツ姿の悪漢諸氏で一杯となっていて、横になって眠るといったスペースはどこにもありませんでした。
房内の収容所は座ったままで、自分のヒザを抱えて眠りにつくのが当たり前になっている、と看守が申しておりましたが、そこにはまさに逮捕される前も、逮捕された後も、生き地獄を生きる、運命に見放された最底辺の人たちが息をひそめて蠢いている、目を覆うような空間があったのでございます。
夜の巷を徘徊している時に「100ドル札1枚くれればお望みの人間を殺してやる」と豪語するフィリピン人のチンピラ風の若い男と出会いましたが、生きるためには悪事を働くしか手がない、という星の下に生まれてきた人間にとっては、そうした選択もやむを得ないのかもしれないと、妙に納得させられたマニラの警察の留置場の悲惨な光景だったのです。
モンテンルパの刑務所には、その頃死刑囚となって囚われていた日本人男性を取材に行ったことがきっかけとなり、その後取材が終わるまでに5回ほど通いました。
これまたこの拘置所で驚かされたことは…
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