「中国人の未亡人が歌う、テレサ・テンの歌悲し」

ある日突然電話をかけてきて、先方は若い男の威勢のいい声で、「おめでとうございます、カニ好きですか?カニが当たりました」と言うそうでございます。

電話を受けた家の人は、なんと答えていいかわからずに、とりあえず「おめでとう、当たりました」の言葉に感謝をしなければならないと、「ありがとうございます」と答えるのでございました。

すると先方の若い男の声の主は、「お届け先の住所をお教えください」と畳みかけてくるのでした。

何のことかわからないが、当たったというならタダで貰っておくのも悪くはないと「住所と名前」を教えることになるのでした。

数日後「当選した」と言われたタラバガニが、クール宅急便で送られてまいります。

着払いで1万2000円でございます。当選したというならタダだったはずなのに、と戸惑いながらもせっかく届けてくれた宅急便のお兄さんの手前、拒む訳にもいかず、仕方なく料金1万2000円を払って引き取るのでございました。

届いた段ボールを見ると、中には確かにタラバガニの足が入っていました。

タラバガニが嫌いだという日本人は少数派でございます。

早速夕飯のオカズにして、と料理にとりかかると、タラバガニの足には期待していた3分の1しか身が入っていませんでした。

スカスカの粗悪品だったのです。

ここでようやく騙されたことに気づくのですが、段ボールの箱を開け、中のタラバガニを取り出して料理した後では後の祭りでございます。

今更返品することもかなわず、街のスーパーで買えば3000円しないようなタラバガニに1万2000円も払わされた悔しさを、ただ噛みしめるだけとなるのでございます。

こうした「おめでとうございます、カニ好きですか?」の詐欺商法は、この冬のシーズンになると、もはや風物詩のごとくに日本中を駆け巡り、被害者が続出しております。

以前留置場で詐欺師と一緒の房で過ごしたことがございました。この詐欺師によれば、「騙せるのに騙さないでいると、なにか大損したような気がして、いたたまれなくなる」とのことでございました。

完全にビョーキなのでございましたが、もう一人、同房だった泥棒氏も「そこにある物をカッパラえるのにカッパラわないと、イライラして心が落ち着かなくなる」と宣われておられました。

詐欺師や泥棒氏は、出来心ではなく「故意犯」、それもビョーキなほどに、であることを学んだ留置場生活でございました。

世の中にはスキさえあれば人の物を泥棒しようとする輩や、騙しにかけようとしている輩がいかに多いかを知ったことは、勉強になりました。

携帯電話を利用した詐欺では「オレオレ詐欺」や「架空のアダルトサイト閲覧料金請求詐欺」がよく知られるところですが、この頃では詐欺の上をいく「アポ電強盗」と言われる押しかけ強盗が横行しているようでございます。

孫や息子を装って、高齢者の自宅に電話をかけ…

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