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クリスマスの前前夜、駅前の宝クジ売り場の前に行列ができていました。
売り場の前ではサンタクロースのコスチュームに身を包んだ熟女の売り子が「本日最終日」の看板を手に持ち、「今日で終わりです。10億円が今日で終わってしまいます!いかがですか」と叫んでおられました。
10億円か、と足を止めて、買ってみようか、とその気になりました。
「1枚いくらなの?」と亡き京塚昌子さまによく似た面影の熟女サンタクロースに尋ねますと「1枚300円でございます」との返事でございます。
1000円出して3枚買ってもお釣りがくると考え、3枚買ってみることにしました。
すると京塚昌子サンタが手前どもの心の内を見透かしたように「本日は最終日ですので10枚3000円のセット販売となっております、誠に申し訳ございませんが、1枚2枚のお買い求めはできません」との言葉を口にしたのでございます。
彼女はいかなる透視術をもって3枚分900円を手前どもが、と見抜いたのでございましょうか。おそるべき職業勘でございます。
なら10枚を買ってみるか、との判断には至りませんでした。
3000円といえば、行きつけのとんかつ屋で上ヒレカツ定食を2回食べられる金額でございます。
上ヒレカツ定食をドブに捨ててまで、夢を買う気にはなりませんでした。
負け惜しみで申し上げれば、宝クジに当たった億万長者のことごとくは当たったことで欲ボケした親族と諍いを起こし、勤労意欲を失って人生を棒に振ってしまった「不幸なケース」が山ほどでございます。
10億円の宝クジ、といっても当たる確率は歩いていて空から降ってくる”いん石”に当たる確率と同じだ、というではありませんか。
当たってもロクなことにならず、絶対に当たるわけのないものに一縷の望みを求める我が心の弱さ、を戒めてその場を立ち去ることにしました。
そんな手前どもの様子をジッと見ていた京塚昌子サンタと目が合いました。京塚サンタは優柔不断な手前どもを嘲笑するかのように「10億円いかがですか」とひときわ高い声を張り上げたのでございます。
月曜日の夜、5時間あまりの時間、SMAPのレギュラー番組の最終回が放送されました。
5人のメンバーが一緒にTVに出演するのはこれが最後、ということでSMAPファンには忘れられない一夜となったのでございます。
手前どもも番組終わりの2時間ほど拝見させていただきました。
かねてからの経緯があって、少年姦ジャニー喜多川さまや妖怪メリー喜多川さま、小妖怪ジュリーさまには心穏やかならぬ感情を抱いている手前どもでございますが、SMAPにはなんの恨みもございません。
超人気アイドルグループということは知っていても、これまで彼らの出演するTVを2時間も見る機会は初めてのことでございました。
2時間眺め続けて改めて分かったことは、当節のアイドルの中でも、群を抜いて歌も踊りも「下手」ということでございます。
それであるのにもかかわらず彼らが国民的アイドルといわれるまでにのぼり詰めることができたのは、多くの人生の成功者にみられると同じく「運の良さ」ゆえであったのでございます。
その「運」を招き入れたのが、彼らの解散の引き金となった飯島マネージャーでした。
彼らがSMAPのレギュラー番組をはじめたのは20年前の1996年でございます。
その頃のアイドルといえば、プライベートの素顔を見せることのない雲の上の存在として「演出」されていました。
それらの壁を敏腕飯島マネージャーは突き破り、バラエティ番組に出演させて「素顔のまま」のSMAPを見せ、親しまれるアイドル、の道を切り拓いたのでございます。
これまでにない、全く新しい「会いに行けるアイドル」のビジネスで成功したAKBの男版を既に20数年前にさきがけて挑戦していたのでございました。
手前どもの40代の知人女性はSMAP大好き人間でございます。
この20年間の人生は嬉しい時も悲しい時もSMAPとともに歩んできた、といいます。
SMAPは私の青春、命なの、とこの度の解散を心の底から悲しんでいます。
「なにも解散しなくたっていいじゃないの。仲が悪いから解散するというなら、世の中の会社や仲間は解散だらけじゃないの。ファンは仲が良い悪いなんか関係ないのよ、いい夢を見させてくれればそれでいいの。なにも解散なんかしなくても。しばらく活動を休みます、でいいのよ。
そのまま5年でも10年でも休み続けていてもファンは何にも言わないわよ、いつまでもいい齢をしてSMAPでもないだろう、というけれど、50になっても60になってもSMAPでいてくれればいいのよ。同じようにファンの私たちだって50になり60になって齢をとっていくんだから全然かまわないのよ。
私が死ぬまでSMAPはSMAPでいて欲しいの。私が死んだ後に解散するんだったらそれはそれで許してあげる。とにかくこのまま夢を見させておいて、私から夢を奪わないで欲しいの」と涙目なのでございました。
男と女の関係でも、この人間はこんな嫌な奴であったか、とその本性を知って別れの時が来るのであれば、その正体を知るのは1日でも早い方がいいのは明らかでございます。
特に夫婦であれば永遠に添い遂げなければならない墓の中に入ってしまってからでは取り返しがつかないのでございます。
妖怪メリーが、自分たちの恩人であり親とも慕う飯島マネージャーを公然と侮辱したことが解散のきっかけとなったことは知られるところです。
そのことで、主君、浅野内匠頭の仇討ちを大石内蔵助がとった、あの「赤穂浪士」のごとき人情劇が繰り広げられたのでございました。
キムタクという裏切り者が出たことも、この現代版「赤穂浪士」の物語にファンのみならず多くの大衆の注目を集めた物語となりました。
大恩ある飯島マネージャーの仇を、と、妖怪メリーや少年姦ジャニーの意向を頑としてはねつけ、グループ解散という形で見事にとったのでございます。
SMAPが国民的アイドルと言われた所以は、この度の解散劇にみられたように、恩人を裏切った人間は許さない、と身を賭して解散を辞さなかった「男気」にあったのでございます。
なにかといえば利に流される世情にあって、一途に恩ある人に殉じた彼らの義に生きる姿こそ、「これでこそ私たちのSMAP」と心あるファンの心を打ったのでございます。
SMAPはその解散のエピソードによって本物のアイドルとして長く語り継がれる資格を得たのでございました。
解散したSMAPのメンバーの個人個人が、これからどんな分野での人生を過ごすことになるかは分かりませんが、名誉のために殉じた栄光は、いつまでも彼らの頭上に輝き続けることになるのでございます。
まさしく芸能人としてより以前に、人間としての意地と誇りを見せた「世界にひとつだけの花」の男たち、と言っても過言ではありません。
この頃では滅多にタクシーに乗ることがないのでございますが、週末、打ち合わせが長引き、時間も深夜近くになりましたので、タクシーで帰ることにしました。
タクシーで家に帰ることがなくなくなったのは倹約、の経済的理由以外にもう一つの理由があります。
随分前ですが、タクシーを拾って自宅のあるマンションの前に来て、「そこで停めてください」とお願いをして料金を払って降りようとした時、でございます。
運転手が「お客さん…