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整形で衝撃的だったのは、いしだあゆみさまです。
いしだあゆみさまは手前どもとは同世代です。
青春時代、我々団塊の世代の手前どもにとっては、いしだあゆみさまは、憧れの並ぶものとていないナンバーワンの人気アイドルでございました。
歌も上手でお芝居もいけてスポーツの方も、スケートでは国体に出るほどの腕前で、上流階級のお嬢さまの品の良さを持つあゆみさまは、東北の田舎の高校生には「雲の上の女性」に思われたのです。
そのマドンナ、いしだあゆみさまが、ある日突然整形をなされたのでございます。
それまで奥二重であった瞼をクッキリと、それと分かる二重瞼に変えられたのでした。
整形以前の可憐な一重瞼の面影が失われ、異様なほどにクッキリした二重瞼のいしだあゆみさまをTVで見て言葉を失いました。
どうしてこんな酷い整形をしてしまったんだ、なんということをしてくれた、俺のあゆみを返せ、とTVの画面を見て腹が立ちました。
あの清純で美しいお顔を整形して、あのような異形の顔にしてしまった彼女の気が知れませんでした。
日本全国の1千万はいたであろういしだあゆみのファンも同じ喪失感を味わったに違いありません。
後年、知己を得ることとなった、株)サンズの代表の野田義治氏は、当時いしだあゆみさまのマネージャーをしていました。
野田氏によれば、プロダクションにも事前に何の相談もなく、勝手に整形をして現れたそうです。
野田氏は突然のことに唖然とした、といいます。
なんでそんなことを、と本人に詰め寄りましたが、ご本人はクッキリ二重になったことが有頂天で、事の重大さには気づいていない様子であったそうです。
それどころか、念願の二重瞼になれたことで得意満面の表情を見せていました。
彼女が整形をしたことのメリットは何もありませんでした。
いしだあゆみさまが自分がどれほど大それたことをしたかを知るまでは、それほど時間を必要としませんでした。
整形をしたことでアッという間に人気は急降下となり、仕事が激減しました。
そこでようやく自分がした整形の意味を悟ったのでございますが、二度とそれまでのような爆発的人気を得ることはありませんでした。
その後TVや映画に女優として出演し活躍し、それなりの存在感を示されていることはご案内の通りです。
整形は芸能人であれば当たり前、の風潮の今日においても、二重瞼の整形のせいで彼女ほど大きなものを失ったタレントを知りません。
その後、いしだあゆみさまは、噂されるところでは萩原健一さまとの結婚で覚えた「薬」のせいで激ヤセとなり、離婚した今でもその後遺症のせいで芸能界復帰がままならない現状、といわれています。
熱狂的なファンであった手前どもには、惜しまれて余りある無念さでございます。
いしだあゆみさまは何故に、天から授かったあの類まれなる美貌を自ら傷つけるような「整形」という「凶状」に走られたのでございましょうか。
欲、でございます。
もっと、もっと、美しくなりたいという「欲」です。
そしてもっと、人気者いなりたい、という「欲」です。
もうそれで十分に美し過ぎるのに、まだ満足することはできずに、挙句の果ての「整形」でございました。
人間とはなんという、足るを知らざる罪深い生き物でございましょうか。
そのために自らを奈落の底に突き落としてしまうなんて、あんまりでございます。
人間はどんなに努力をしても、思い通りに事を成就させることはかないません。
運が大きく左右します。
時代にその美しさや魅力がマッチしなければ、祝福されることはないのでございます。
いしだあゆみさまにはその「運」がありました。
有名になりたい、お金持ちになりたい、大好きな男と巡りあって結婚したい、と思ってもその希望する世界に自分を運んで行ってくれる船がやって来て乗ることができなければどうにもならないのです。
しかし、いしだあゆみさまは運に恵まれて、その船に乗り、希望通りに生きるスターの座を手に入れたのでございます。
ここから先はありのままに、欲をかきすぎることのないよう、これまでと同じように自然体で生きればよいだけでございました。
まさしく、運命の命じるままの道を、でございます。
しかし彼女は誤解しました。自分の意志ですべてを変えてきた、と思い込んだのです。
だからこれから先の人気も自分の意志でどうにでもなる、とタカをくくったのでございます。
つかんだ栄光の座は様々な要素が絡み合って編まれた、絶妙のバランスで成り立っている脆いイス、でございます。
一方のバランスを無理矢理崩してしまえば、すぐに倒れてしまう儚いものでございます。
いしだあゆみさまはしかし、その微妙なバランスの綱渡りを勝手にお止めになられて、コッチの方がいい、と両手で縄を掴んだのでございます。
全ては運によって得た栄光でございましたのに、運を仇にしてしまわれたのでございました。
彼女が、全ては運によって命じられた道なのだから、これから先は良い運であろうと悪い運であろうと不服を口にすることなく、運に命じられるままに自分の芸能人としての仕事を全うしていこう、という諦観を持たれていたら、「整形」という「自爆行為」に走ることはなかったのでございます。
1億3千万人が住むこの日本で人気スターになったことには、人智を超えたもっと大きな力が働いたのだ、との理解が欠如していました。
なまじ自分の実力でノシ上がってきた、という思い上がりが落とし穴となったのでございます。
このことはスターの座にある芸能人のみに言えることではありません。
私たちはどうして今の職業に就いたのか、を胸に手をあてて考えてみれば答えは明らかでございます。
将来の人生設計のため、親のため、恋人のため、好きだったから、義理で、偶然になんとなく、金のため、と様々でございましょうが、果たしてすべては自分の意志の選択でなされたことでありましょうか。
よくよく考えてみれば、実のところは運命的な巡りあわせで今の職業に就いていたことに思い当たる筈でございます。
必ずしも最初は喜んで今の仕事に就いたわけでもないのに、気がつけば生涯の仕事として生き甲斐を感じている、のでございます。
故に、人間の仕事とはすべからく運命に命じられた仕事なのでございます。
容姿もまた、そう信じて生きていくことが肝要でございましょう。
どうせ自分が決めた顔形ではないのだからジタバタせずに気楽に行こう、の気の長い生き方でございます。
慌てるコジキは貰いが少ない、と言いますが、いしだあゆみさまの残念な失敗の例は、「慌てるコジキ」の象徴でございます。
ありのままを受け入れてジタバタせずに、後は自分の優れた才能に磨きをかけていけばなんとでもなる、の生き方が優れていることは天童よしみさまの奥ゆかしい二重瞼の整形を見れば明らかでございます。
なのにどういうわけでございましょうか…